BIM導入の経緯2
- OCHII JUNICHI
- 2021年4月9日
- 読了時間: 5分
みなさま、こんにちは
前回はBIM導入の経緯をお話しました。
長々と書きましたが、CADでの作業、業務に不満、疑問を持っていたのが
BIM導入のきっかけとなりました。
さて、今回はBIMを導入した後どうなったか、どのような効果が得られたか
ということについて、また、導入の経緯をもう少し詳しくお話したいと思います。
まずは、導入後どうなったかです。
導入直後のデータですので、今から10年近く前のデータになりますが
十分参考になると思います。
当時、Revitのライセンスを購入していた某商社の雑誌にも掲載された
内容ですので既にご存知の方もいるかも知れません。
結論から言いますと、業務量が対JW比で1/3、AutoCAD比で1/2となっています。
※1、印刷、打合せ図面作成、役所・施主打合等、日常業務を含んでいます。
※2、各ソフトウェアのデータ抽出は類似案件で行っています。
※3、BIMの総時間は当時の想定です。実際は500時間程度でした。

ここで各データの詳細について列記していきたいと思います
【データ抽出方法】
全体のデータは約2年程度かかって抽出しています。
業務管理ソフトでこつこつ、一日毎に何の業務を行ったかログをとり
集計すると言う抽出方法です。
JW,AutoCAD,Revitはそれぞれ、使用期間が明確に分かれています。
類似案件の単純比較資料になります。
各ソフトの習熟度等は加味していません。
ただし、どれもそこそこ使えるレベルです。
【JWのデータ特性】
基本的に各図面ごとのデータです。
平面図は平面図データ、立面図は立面データと言う方法です。
図面枚数≒図面データ数
【AutoCADのデータ特性】
レイアウトを多用し、作成データの削減を図っています。
平面図、平面詳細図、部分詳細図は同一データで処理しています。
断面図、矩計は同一データで処理しています。
データは大きく、平面形、配置・屋根伏、立面・断面系、の3データです。
シートセットマネージャを使い、図面名称等は一元管理しています。
ブロック、パラメトリックを多様しています。
【Revitのデータ特性】
1データです。
この当時、仕上表、特記仕様書、耐火リスト、外構図、雑詳細はCADです。
各ソフトを使用していた頃の実情
続いて、各ソフトを使用していた頃の実情についてお話したいと思います。
※各ソフトのメリット、デメリットを忖度無く書いています。
人によっては反論もあるのは承知していますし、
私自身、すべてのソフトを完璧に理解しているのではありませんが、
純粋にその時何を考え、どう判断したかをお話することにより、
導入の経緯をご説明したいと思いますのでご了承いただきたく存じます。
JW時代
当時勤めていた事務所では私が勤務し始めた頃、JWでの作業を行っていました。
元々、学校ではAutoCADでレイアウトを使っていましたので
JWの生産性の低さが問題でした。
印刷するにも、実施図200枚程度の出力は一日仕事になっていました。
JWは日影、天空が無料で検討できますし、あれだけのCADを
無料で公開しているのですから素晴らしいソフトです。
しかし、経営目線、マネジメント目線で見るとどうでしょうか。
ソフトが無償だからといって人件費が高くなるようでは本末転倒です。
対BIMで言うとJWは3倍高額なプラットフォームという言い方ができます。
他にもJWを採用する事による、業務の弊害は多々ありました。
・データが多すぎる。平面図を修正すると、
関連データを開いて修正すると言う作業が発生する
・どのデータがどのデータとどのように紐付いているか
作成した本人しか分からない。
(担当者による作図ムラをもろに反映してしまう)
・意思伝達することが多すぎ漏れが多い(従業員の相性問題が発生する)
・平面図が変更されると、建具配置図等の差し替えが都度発生する。
・各データ毎に、正しい部分と誤りが混載し、正のデータが
存在しなくなる。
(平面詳細図のこの部分は正解だが、他は平面図が正という状況)
・当然、展開図は不整合を融合してしまう。無意味な図面に過大な時間を要する。
・変更の追随が容易ではなく、実施完了時には何が正なのか
担当者ですら怪しい状況。
・成果物のチェックをすると不整合だらけなので、成果物のチェック、修正が終わらない
・平面と同時に立面系を検討できていないので、手戻りが多い。
・手戻り、変更、修正が同時に発生し現場が混乱する。
・徹夜作業を強いられる。図面品質は低下する。
・作業量が多いので、一人がこなせる業務が少なくなる。
AutoCAD時代
JWの作業ではなかなか業務が進まないので、AutoCADを導入してもらいました。
前述のAutoCADのデータ特性に記した作図方法ですので、
JWの不満点のかなりの部分を解消できましたが、新たな問題も発生します。
・従業員、もしくは同時使用数に応じたライセンスが必要。
※autocadでの業務効率の成果が出るまでは、全面的な採用にならない
・新しいソフトを習得する意思のない従業員が一定数出てくる。
これは後のBIMも同じ問題を抱えます。
コストの問題よりも、新たなソフトの導入はハードルが高いです。
練度の高い従業員ほど新しいソフト導入のハードルが高くなる傾向にあります。
未解決の問題もあります
・平面と同時に立面系を検討できていないので、手戻りが多い。
・変更の追随がJWほどではないが容易ではない
CADの本質的な問題
・手数が多い(詳細な線をたくさん手入力で書く)
・表現したい断面、平面に応じ、データが増える
・施主との合意形成に時間がかかる。
・プレゼン資料の作成にコストがかかる(パース代等)
JWの時と比較すると、「作業」より「業務」の問題が顕著化していました。
CADの本質的な問題はJWのときにもあったのですが、他の問題に埋もれていました。
次回はRevitを導入した直後の実情についてお話したいと思います。
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